2015年10月3日土曜日
出生前診断の「誤診」をどうとらえるか
■診断結果は「正常」、生まれた子供は「ダウン症」で賠償金1000万円
出生前診断で「正常」と言われたから安心して産んだら重度のダウン症でたった3か月で亡くなってしまい、診断をした医師を訴えたというなんともやりきれない裁判の判決が出ました。
私が出生前診断を受けた時は、「あくまでも生まれる前に分かる範囲で下す診断であり、健康な子供が生まれることを保証するものではありません」と、100回くらい念押しされました。(参考:出生前診断を受けました)
もし、診断をした医師が「絶対大丈夫!ダウン症の心配はまったくないですよ!」と告げていたなら問題あると思います。おまけに診断方法もマズかったらしく、裁判でも告知ミスが認められています。
しかし、どんな診断にも100%はないので、きちんとした検査で「正常」と出ても、障害がある子供が生まれることがあります。そんな時、裁判を起こす側は、医師の何の罪に対して訴えを起こしたらいいんでしょうね?
だって、子供が死んだのは医療ミスじゃないんです。
先天的にあった障害が原因なんです。
誤診かどうかも微妙です。本人(赤ちゃん)を診察したわけではないですから。
しかも、正しく診断されたとしても、治療することはできないのです。
今回の訴えでは、「選択の機会が奪われた」ことが重視されました。
「選択」とはつまり、産むか産まないか、という選択です。障害があるとわかっていたら、中絶する選択肢もあったのに、ということです。
しかし、これで医師の罪を問おうとすると、原告側に深刻な矛盾がうまれます。死んでしまった子供がかわいそう、命を何だと思っているの、などと訴えようものなら、「いやいや何言ってんの、アンタその子を殺そうとしてたんだよね?」とツッコまれてしまいます。裁判でとう扱われるかはともかく、自分自身がその矛盾にどう向き合えばいいのか、私には分からないです。
高齢出産が増え、これからは出生前診断を受ける人が増えていくでしょう。
するとこういった裁判も増えていくのでしょうか。
訴える方がモンスターなどと言うのは簡単ですが、やっと念願の妊娠をし、自費負担で出生前診断をし、「正常」の結果に安心して産んでみたら呼吸もままならない重度の障害で、一度も抱くこともできず苦しむところを見ただけで死んだ、なんてことになった時、どれだけの人が「ま、しゃーないわ」と割り切ることができるでしょうか。
技術の進歩で制度がどんどん上がっていく出生前診断ですが、「陰性」と出て健康な子供が生まれること以外、ハッピーエンドを想像することは難しく感じます。
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